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2014.6.1.(日)

夕暮れの残骸

 赤く染まってゆく午後7時の西の空に背を向けて、またはそれに向かって人々は家路を急ぐ。長い冬が終わって春が芽吹き、生命が生命を謳歌する季節がやってこようとしているけれど、夕暮れの空はいつだって刹那い。昼間はあんなに太陽がしつこくギラついて、夜の闇はあんなに深く長いのに、夕暮れ時は一瞬だ。マンションの西の壁面を赤く染め上げたあとは、夕闇が速やかに大通りや、家々のベランダや、公園の噴水を飲み尽くしていく。

夏が来る。濃い草いきれの匂いが風に乗って鼻先をかすめると、埋もれていた古いセピアの記憶が鮮やかに色を取り戻す。どれだけ時間が経っても、僕らはあの夏の街角に、今も立っている。

暮れていく街角。行き交う車の列。

その中に君を見た気がした。あれは、幻だったのか。

いつかの、かつてそうであったものの残骸。そう、それが僕だ。

いつかの暑い夏の、取り残された残骸。そう、それが僕らだ。

僕らは夕暮れの残骸の中を生きているんだ。

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