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2016.3.30.(水)

甲府の月、遠吠えの夜

 浅草のたいらの部屋で目覚めると、もう街はあわただしく動き出していた。たいらたちと別れた後に向かった先は、高田馬場。僕は東京時代にここの近所に住んでおり、大体いつもこの街にいた。幾多の思い出がある場所だが、福井に戻って3年以上が経った今では、この街もいくぶん新鮮な目で見ることができる。

 新宿アンチノック印藤氏と、お決まりのようなタイ料理バイキング。我々が意気投合したのも、グリーンカレーが大きなきっかけの一つだったりする。カレーからコーヒー、本当に大体いつものお決まりのパターン。大体いつものお決まりのパターンの中でされるのは、大体いつも夢の話だ。前日譚があり、後日譚がある。続いていくストーリーだ。

 話し込んで乗るべき電車の時間に間に合わなくなってしまった。この旅初めての特急列車に乗ることにした。向かう先は、山梨県、甲府。ツアー3日目のスタート。

 山梨でのライブは、僕自身初めてである。福井と山梨というのは、地理的につながりができにくい関係とも言える。今回は21日東京と23日長野が先に決まっており、この22日のスケジュールが空いていた。1日オフでもよかったけど、どうせなら東京と長野の間にある土地でライブができたらいいなと思っていた。そこへちょうど紹介してもらえた訳である。

 僕は新宿から特急列車「あずさ」に乗り込んだ。鈍行列車の旅をしていると、この特急列車の快適さが身に染みて有り難い。イスが楽だ!速い!

 新宿から東京西部に入るあたりから、あたりが段々と山がちになってくる。東京都も西の西は、秘境とも言っていい自然が残っている。東京はどこもかしこも大都会というイメージを持っている人は、驚くだろうと思う。やがて県境を越え、山梨に入る頃には、電車は渓谷のはるか上を通る線路を滑るように進んでいくのであった。絶景。

 やがて甲府駅に到着すると、今度は身延線に乗り換えて数駅。初めて降り立つのは甲斐住吉駅だ。

 この日の会場は甲府KAZOO HALL系列になるのかな、bAmbooというライブバー。駅から結構歩いたと思う。到着した頃には身体が汗ばんでいた。

 程なくして今回お世話になるKAZOOの中島氏が到着。リハーサルをしてくれたのだが、とても音がいいし、やりやすい。お店の雰囲気も抜群だ。

 メガホンズも以前ライブ後ここに来たみたいだし、この前日にここで酷い打ち上げを行っていたのは知った人であった。日本酒でプールができて人が浮いていたらしい。

 前の日に風呂に入っていなかったので気持ち悪いし、シャッキリした気分でライブに臨みたかったので、近くの共同温泉にやってきた。近くといってもやはり歩くと相当な距離なので、中島氏が車を貸してくれた。本当にありがたい。

 国母温泉という共同の温泉。源泉かけ流しの湯は最高だった。露天風呂もあった。隣の家の敷地がよく見える。向こうの窓からは丸見えだ。はは。

 さっぱりして戻ると、共演者の方々も到着していた。皆初対面。僕を入れて総勢5名。こんな福井の見ず知らずの男をここにブッキングしてくれるなんて、本当に有り難いことだ。

 ライブが始まった。地元では弾き語り活動を結構ガッツリやっている人たちが集まったそうで、レベルが高い。

 山梨勢の歌う曲は、何らかの傾向が認められた。福井にはあまりいないタイプが多いのである。色々MCなどを聞くに、山梨でのQWAIの影響力は絶大なんだと感じた。QWAIとは山梨を代表するバンドである。



撮影:ぺいさん

 あっという間に時間は過ぎ去り、ライブ終了。僕はトリ前の出演だった。みんな熱心に聴いてくれているのがわかって、嬉しかった。何かを残せただろうか??

 ライブの緊張から解放されて、お店名物のグリーンカレーを。昼もグリーンカレーだったが、まったく問題ない。僕の血はカレーでできている。しかも、このカレー、相当美味い。まろやかだが、しつこくない。どうやら豆乳を使っているという噂を聞いた。中島氏の作らしい。PA具合もそうだが、良い塩梅を知っている人なんだな。

 QWAIの大久保良一氏が遊びに来てくれた。次はぜひ対バンを、と約束し、パシャリ。僕は昔から写真が苦手である。どういう顔でどういうポーズで映っていいかわからない。が、ボクシングのファイティングポーズをとると割といけることに最近気づいた。まるでボクサーのタイトルマッチ前の記者会見だ。

 帰ってしまわれた人もいたけど、この日の共演者たちと。また再会できたら嬉しい。

 翌日も控えた僕は、中座を請うてbAmbooを後にした。とは言っても2時近くになっていたわけだが。また必ず来たい、山梨が好きになった。本当に皆さんありがとうございました。

 この日のお宿はbAmboo最寄りのネットカフェ。とは言っても歩いて3,40分かかった訳だが。住宅街のクネクネした道を、スーツケースをガラガラ引きずりながら向かった。音に目覚めた犬が、けたたましく吠えついた。僕が見えなくなると、何かを呼ぶように遠吠えを始めた。月が美しい、果てしなく美しい山梨の夜空だった。犬の遠吠えに月夜なんて、ここ最近じゃ最も完璧な夜だったと思う。ネットカフェの灯りも何だか美しく見える。さすがに見つけたときは安堵の気持ちも隠せなかったけど。

 チェックインすると、手慣れたようにブースに入って、横になった。

 僕は羊を数えるまでもなく、まもなく深い眠りに落ちていった。

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