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ブログ2016.9.30.(金)
ジンクス
前日の四谷アウトブレイク、the8flag企画から一夜。
僕は、四谷アウトブレイクの床で目覚めた。四谷名物、「床寝」である。仁志とアウトブレイク店長、佐藤’boone’学と遅くまで飲んだ後、仁志とライブハウスに戻ってもう少し飲み、床の上にノックアウトという訳だ。
完全燃焼の企画ライブを越えて、仁志は軽く抜け殻状態のようにも見えたが、そうは言っていられない。2人ともこの日もアウトブレイクで弾き語り企画に臨むことになっていた。
昼頃起きて、2人で命の洗濯に。お茶の水のビル街にあるスーパー銭湯。どちらかと言えば郊外の幹線道路沿いに店を構えるイメージのあるこういったスーパー銭湯だが、こんなところにあるとは、ちょっと新鮮な気もする。
束の間の憩いを求めてやって来ているビジネスマン達に混ざって、風呂に浸かる。その後はそこの食堂で瓶ビールを始めてしまい、アルコールが良くなった血流に乗って、体中に運ばれていく。ちょっと飲んだだけで景色がユラユラと曲がり出した。
軽く戦意を喪失しかけながらも何とか銭湯を出て、四谷に帰る。アウトブレイク近くのラーメン店で、想定外の破壊力を持つラーメンを食べるに及んで、「一日が終わった」感に強く襲われた。これからまた歌うなどとは信じられないと、身体が暗にメッセージを送っている。
しかしながら僕には、あるジンクスがある。ツアー先でライブ前にスーパー銭湯に入ることがままあるが、何故だかスーパー銭湯に入った後のライブは外れがない。頭は冴えるし、声も滅茶苦茶に出る。ミュージシャンやスポーツ選手に限らず、我々はこの「ジンクス」というやつに度々人生を左右される。いわゆる弦担ぎに近い感じなのかも知れないが、弦を担がないと落ち着かない、という心境にはどうもあまりなりたくない。だがスーパー銭湯に行くと外れがない、というのは今までの自分データ上ではかなり確かなことなのだ。ボーカルをするようになってから、ギターだけの時とは段違いに、人体の、自分の身体の不思議について考える。ほんのちょっとしたことで声が出たり、出なかったり、一体何なんだろうと、迷惑千万というよりはむしろ興味を持って観察している。声が途中で出なくなった時は、「この野郎、やりやがったな」とむしろ面白みを感じたりもする。ジンクスは超えたいと思っているが、自分と向き合うことはやめるわけにはいかない。
この日もthe8flag企画と言うことになっていた。というより仁志企画なんだろう。四谷名物企画、「四谷のわ」の特別編、「遅れてきた青年たちのわ」である。
まったくこの「遅れてきた青年」ってのは自分にはぴったりのフレーズに思えて仕方ないのだが(もはや中年に足を突っ込んでいることには触れないでもらいたい)、企画自体は四谷が提唱する超斬新な弾き語り企画。福井でも6月に四谷発祥ということでアイデアをそのまま拝借し、「福井のわ」という名前で開催させてもらった(その時のブログはまだ書いていない、タイムマシンの旅で明らかになる、と思う)。
出演者が輪になり、1曲ずつ歌い継ぐという、なぜ今までなかったのだろうか、でも確かになかったであろうこの「わ」企画、福井でもご覧いただいた方には「面白い!」と大好評なのであった。その企画の発案者が、四谷店長佐藤氏と、この仁志なのである。
その「四谷のわ」の第一回目に僕は参加させてもらった。あれから2年くらいか。その時共演だったスナカワタカヒロくんも今回再び共演、ということで楽しみにしていた。
ライブが始まって、昼からアルコールを入れていた僕はライブ中も飲み続けた。通常はアルコールを飲むと声が出にくくなるものだ。多くのボーカリストがそう言うし、自分も例外ではないと思う。だが、スーパー銭湯に入ったからか、どこまでも声が出る。飲んでいてぼんやりしているようで、頭の芯が冴え渡っている。一向に枯れる気配がない。またしてもジンクスに捉えられてしまった。良いことなんだかどうだかわからない。そんなわけで、上がりっぱなしのライブをしたにもかかわらず、僕はどことなく釈然としないままその日を終えた。
エイトTを着た僕と、一寸笑劇Tを着た仁志。実は始まったばかりの何か。
スナカワくんも2年前とは比較にならないくらい成長していた気がする。他の出演者もそれぞれの持ち味を遺憾なく発揮していた。だけど負ける気が一向にしなかったのは、やはりスーパー銭湯に行ったからなのか…
その後、電車を気にするスナカワくんを引き留め飲んだ我々は、四谷を後にして、吉祥寺に向かった。
伝説の中華屋でさらに飲んで、仁志の家で意識を失った。